コンサル会社の譲渡前に準備するPMIの要点は、顧客対応と案件の納品を止めないために、引き継ぐ仕事、担当者、必要な資料、確認期限を決めることです。代表者の頭の中にある営業・品質管理の判断を、次の責任者が使える形へ整理します。本記事では、成約までに譲渡企業が用意する引継ぎ準備に絞って説明します。
まず「変えないこと」と「引継ぎが必要なこと」を分ける
買い手候補との対話では、サービス名や組織図だけでなく、顧客に約束している納品日、対応時間、品質確認の方法を確認します。現行の担当体制を一定期間維持したい業務と、代表者の退任までに代替担当を決める業務を区別すると、譲渡後の計画を作りやすくなります。
たとえば、代表者が最終提案と顧客の苦情対応を担っている場合、日常の案件管理表だけでは引継ぎが足りません。どの条件なら提案を承認するか、どの問題を誰に相談するかも記録します。
譲渡前に作る5つの引継ぎ資料
| 対象 | 用意する資料 | 確認すること |
|---|---|---|
| 顧客・進行案件 | 案件別の担当、次回納品日、検収・請求予定、未解決事項の一覧 | 担当交代が重なる案件と、説明が必要な顧客を把握できるか |
| 人材・役割 | 営業、提案承認、納品責任、品質確認の役割表 | 代表者だけが判断している仕事に代替担当と引継ぎ時間を設けられるか |
| ナレッジ | 提案書、教材、診断票、手順書の保管先と管理者の一覧 | 最新版を特定でき、利用範囲が未確認の資料を区別できるか |
| 管理業務 | 月次締め、請求、入金確認、外注費確認の業務カレンダー | 譲渡日前後の締切と担当の空白がないか |
| 顧客・従業員への説明 | 対象者、説明担当、伝える内容、質問への回答窓口の案 | 決定事項と未決定事項を分けて説明できるか |
一覧には「資料の所在」「現担当」「引継ぎ先」「期限」「完了条件」の欄を設けます。顧客名や従業員情報を外部へ共有する範囲・時期は、既存契約、情報管理方針、個別事情を確認したうえで決めてください。準備用の一覧を作ることと、そのまま買い手候補へ開示することは別の作業です。
担当者と完了条件を決める書き方
「顧客引継ぎを行う」だけでは、誰が何を終えれば完了なのか分かりません。「対象案件の次回納品日と懸案事項を一覧にし、現担当と引継ぎ先が確認する」のように、作業と確認方法をセットにします。
記入例(説明用の想定):顧問先Aの引継ぎ/現担当:代表者/引継ぎ先:担当マネジャー/確認期限:個別に合意した日/完了条件:定例会の議題、未回答の質問、次回提案の方針を両者で確認。実際の日程や説明相手は、顧客との関係や合意状況に合わせて調整します。
準備の進み具合は具体的な指標で確認する
「PMI」「ブランド継続」「報酬制度」は検討テーマであり、そのままでは進捗を測る指標になりません。準備状況は、対象範囲と数え方を定めて確認します。
- 引継ぎ先決定率:引継ぎ先が決まった対象業務数 ÷ 引継ぎが必要な業務数。
- 資料確認率:現担当と引継ぎ先が内容を確認した資料数 ÷ 確認対象資料数。
- 未解決事項:期限超過の件数と、その原因・対応担当。
これらは社内で準備を管理するための例です。数値を上げるために対象を減らすのではなく、重要顧客の納品や代表者依存の強い業務に抜けがないかを合わせて点検します。
買い手候補との協議で埋める空欄
譲渡企業だけで譲渡後の役割や運営方法を確定することはできません。現時点で分かる業務と希望条件を整理し、買い手候補と確認する事項を残します。代表者の関与期間、意思決定の窓口、当面維持する顧客対応、変更を検討する管理業務などが対象です。
中小企業庁は、PMIの検討と進捗管理に使える分析ワークシート、アクションプラン、統合方針書を公開しています。全体計画を作る際は、中小企業庁「PMIを実施する」の資料も参照できます。
相談前は、準備できている範囲から整理する
最初から全資料を完成させる必要はありません。代表者が担っている仕事、進行中の重要案件、譲渡後も維持したいこと、まだ決まっていないことを分けるところから始めます。引継ぎの負担が大きい業務を先に把握すると、候補先との協議に必要な時間も見積もりやすくなります。
売却検討全体の流れはコンサル業界M&Aの基礎ガイド、個別の引継ぎ準備については譲渡相談窓口をご利用ください。

